市民のキャリアデザインとは

キャリアデザインとは、キャリア(自分の生き方)をデザイン(設計)することです。
これまでの経済成長を続けていた社会では、よい学校にいけばよい就職ができて幸せになれると信じられてきました。しかし、90 年代以降の社会の急速な変化にともない、それまでも生き方が通用せずに様々な社会問題が生じています。地域社会では、フリーターやニートの急増、商店街の地盤沈下、いじめの問題、凶悪な事件などが増加しています。あるいは団塊世代の人たちにとって地域社会で新たな生き方を探ることも切実な問題です。

キャリアデザインは、このように変化する社会に通用する生き方を設計したり、これまでの自分の生き方を見直して再設計をはかることです。また、これからの社会では、主体的に自らを開拓する自立的な個をめざすとともに、地域の一員として地域のために働く「まちづくり市民」としての意識や行動も求められています。
このような市民のキャリアデザインを支援するため、博物館では市民の<学び>のための活動を行います。この<学び>においては、博物館の所蔵するコレクション、情報、施設などが基盤となります。そして、市民は、自分の主体性や能動的な意思を伴い、基礎的な知識を獲得する「基礎的知識の習得、理解」、知識を自由に使いこなせる力へと組みかえる「習熟的学力」、作品の創造、討論するなど社会参加につながる活動をする「探求・創造・表現の力」の各階層を経験します。これらはすべて、他者との共存や、対話・交流、共同作業によって成り立ちます。
博物館では、たとえば、「学習目標の達成」(パターンⅠ)、「自分のキャリアの設計・再設計」(パターンⅡ)、「まちづくり市民」(パターンⅢ)の育成などをサポートすることができます。

パターンⅠパターンⅠパターンⅡパターンⅡパターンⅢパターンⅢ
ひまわりの図

また、博物館が市民のキャリアデザインを支援したり、<学び>の拠点となるのに必要なことは、地域社会内で孤立化している各コミュニティ(家族・学校・商工業者・農業者・市民団体・福祉関係者・行政など)を博物館の<文化>によってつなげ、相互に交流させることです。<文化>は、これまでの博物館で扱ってきた歴史、民俗、芸術などに加えて、人の生涯における仕事の技、芸道、遊び(趣味)、地域活動などをふくめた総体をさします。これらを一方的に人に教えたり与えたりするのではなく、お互いに共有することで、分断化されていたコミュニティ間のコミュニケーションの促進剤になります。お互いの仕事や生き方、考え方、価値観などを共有し、認め合うことができるだけでなく、個の生き方の幅が広がり、地域での協働的な仕事や活動にも発展することが期待されるのです。学芸員はそのための「つなぎ役」をつとめます。